実態に合わぬ基準今も 保育士の賃金改善進まず <参院選・暮らしどこへ>

同僚と事務作業をする前野さん(中央)。保育士の待遇改善は途上にある=6月24日、福室希望園

 思いっきり遊び、たっぷり眠る。乳幼児は夏場、たくさん汗をかく。仙台市宮城野区の認可保育所「福室希望園」では、保育士たちが温水シャワーでまめに園児の汗を流す。

 「あせも防止は園のモットー。保育士は汗だくになるけど、子どもたちが快適に過ごせる」。2歳児を受け持つ保育士前野穂乃実さん(25)がほほ笑む。

 きめ細かい保育を実施するため、福室希望園は国の配置基準を上回る保育士を置く。3歳児の基準は子ども20人ごとに保育士1人が原則だが、同園は19人に保育士2人。必要に応じて各クラスに入るフリーの保育士も3人いる。

 「専門知識を生かし、子どもの成長に携わる仕事はやりがいも楽しさもある」と前野さん。充実した日々を送るが、他業種の待遇面を見ると「専門性が社会に正当に評価されていない」と感じることもある。

 国は2013年度から保育士の処遇改善に取り組むが、21年の平均賃金は全国25万300円(宮城県22万9500円)。全職種平均の30万7400円(同27万7900円)に届かない。

 賃金水準の低さで保育士不足が慢性化する。宮城県の委託で保育人材の確保を担う県保育士・保育所支援センター(仙台市青葉区)は14年度の開設以来、21年度までに669人の就職を実現したが、常に求人数が求職者数を上回る。

 横山美幸センター長は「資格がありながら現場を離れている『潜在保育士』の就労促進では賃金面が障壁となる」と指摘する。

 岸田文雄首相は看板政策「新しい資本主義」で、分配戦略の柱に保育士らの賃上げを据えた。今年2月、福室希望園の前野さんの収入もアップした。

 政府は収入の3%程度、月額9000円の上乗せをうたうが、前野さんが受け取ったのは7000円。補助額は実際の職員数にかかわらず、配置基準に基づく保育士数で算定される。同園を運営する社会福祉法人は他の2園との補助総額を職員数で割り、配分した。

 「保護者の働き方も保育所の役割も多様化したのに、配置基準は半世紀以上変わらない」。3園の統括責任者で県保育協議会顧問の高野幸子さん(78)は、国の政策と実態との乖離(かいり)を問題視する。

 国の19年の全国調査によると、私立認可保育所1施設当たりの保育士数は配置基準の約1・4倍。国は超過分の人件費を補助せず、各園が経営努力で賄う。

 高野さんは言う。「良い保育士をそろえないと良い保育はできない。手厚い保育をするほど厳しい経営を迫られる。国は基準を見直し、保育の質を底上げすべきだ」
(報道部・片山佐和子)

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