岸田政権発足1年 国民置き去りで支持率低下 社説(9/23)

 岸田政権が誕生して間もなく1年を迎える。内閣支持率は当初、上昇傾向にあったが、このところは下降線をたどっている。「聞く力」を発揮することなく、身内の擁護や配慮に傾注する姿勢が国民の不評を買っているようだ。

 「しっかり検討し…」との答弁を繰り返す岸田文雄首相は、決断の遅さから「検討使」とも言われる。ところが結論を急いで世論を読み違え、支持率を落とすことになった判断が少なくとも三つある。

 一つは世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党との関わりを巡る対応である。党重鎮の安倍晋三元首相が参院選の街頭演説中、教団とのつながりが遠因で銃撃された。霊感商法などで批判を浴びた教団と党議員との接点が明らかになるにつれ、真摯(しんし)にうみを出そうとしない党への不信感が広がった。

 岸田首相は、お盆後の9月と見込まれていた内閣改造と党役員人事を8月に前倒しした。教団との関係が判明した7人を閣僚から外すなど火消しに走ったが、有権者には対症療法と映ったに違いない。

 もう一つは安倍氏の国葬である。銃弾に倒れた4日後に執り行われた安倍氏の家族葬で、多くの国民が弔意を表した。党本部前は献花をする人が長い列をつくった。

 7月14日の記者会見で、国葬の実施を表明した岸田首相は(1)憲政史上最長の8年8カ月、首相の重責を担った(2)国際社会から高い評価を受けている(3)選挙中の蛮行で逝去され、国内外から追悼の意が寄せられている-を挙げた。

 にもかかわらず国民の理解が得られないのは、党内最大派閥の清和政策研究会(安倍派)への配慮が透けて見えるからだ。法的根拠がない国葬の独断専行、森友学園や加計学園、桜を見る会など安倍氏への疑念に対する国民のわだかまりも捉えきれなかった。

 三つ目は、原発政策である。政府は先月下旬、首相官邸で開いた「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」で、脱炭素社会の実現と電力の安定供給に向けて次世代型原発の建設を検討する方針を示した。

 原発の新増設やリプレース(建て替え)は想定しないとした従来のエネルギー政策基本方針の大転換となる。最長60年とした原発の運転期間の延長も検討する。党を支持する経済界などから強い要望があってのことだ。

 しかし、直前の参院選で公約には掲げなかった。東京電力福島第1原発の事故処理は先が見通せず、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分先すら決まっていない。丁寧な説明で評価を高めた首相就任直後とは正反対の態様と言えるだろう。

 国民が期待する「聞く力」とは民意をすくい上げ、それを国政に反映させることである。党内基盤を固めようとする内向きの発想が、岸田政権の魅力をそぎ落としている。

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