【動画あり】「芋煮会」初心者のために 仙台風と山形風を河原で作ってみた
「『食欲の秋』だから、仙台定番の芋煮会を記事で紹介しよう」と企画したものの、「そういえば、最後に芋煮会をしたのはいつだっけ」と思い出せない。周囲に聞いても「学生時代以来、やっていない」「子どもの頃、町内会でやったなあ」などと随分遠ざかっている様子。伝える側がこれではいけないと、職場の同僚5人で芋煮会を楽しんできました。(編集局コンテンツセンター・小沢一成)
大鍋はレンタル まきも店で調達可能
訪れたのは、仙台市青葉区の広瀬川に架かる牛越橋近くの河原。杜の都を代表する清流から緑豊かな青葉山を望む人気のスポットで、例年10月のピーク時には数百人が集まるという。この日は9月下旬の平日とあって、芋煮会を楽しむグループは数組だった。
芋煮会の記事を書くなら、下ごしらえから手順を追って紹介すべきだとおしかりを受けそうだが、秋晴れの空の下、仲間同士で大きな鍋を囲み、親睦を図るのが芋煮会の醍醐味(だいごみ)。準備はなるべく手軽に済まそうと、最寄りのみやぎ生協八幡町店(仙台市青葉区)で「いも煮セット」を予約した。
注文したのは「豚肉・みそ味」の「仙台風」と「牛肉・しょうゆ味」の「山形風」の各5人前。カット・皮むき済みの野菜と肉類のセットで、下ごしらえの手間が要らない。当日は大鍋2個を借りたほか、店頭でまき2束と紙皿などを調達した。
参加メンバーが自宅から持ち寄ったのは、調味料や軍手、着火用のライター、新聞紙など。仕事とはいえ、大人の芋煮会に不可欠なビールもお供に加えた。お酒が飲めない同僚のために、ノンアルコール飲料やソフトドリンクを用意したのは言うまでもない。
現地に着いて最初に取りかかったのは、即席のかまど造り。なるべく平らな場所を探し、河原の石を拾い集め、鍋を置けるように組んでいく。火が燃えやすいよう、空気の通り道を確保した。
火起こしが肝心
続いて、火起こしだ。今回取材した「元祖いも煮会場広瀬川」(青葉区)の宍戸正樹さん(50)が「火起こしに悪戦苦闘する人が多い」と言っていたが、普段の生活で経験する機会が少なくなっており、一番の難所なのかもしれない。
今回はアウトドアに詳しい同僚がまきをキャンプファイアのように井桁に組み、新聞紙にライターで火を付けた。ブランクがあったようで1回で着火できず、「恥ずかしい」と独りごちていた。芋煮会には鍋奉行ならぬ「かまど奉行」がいると心強い。無事に煙が立ち上ると、拍手が沸き起こった。
「仙台」vs「山形」も楽し
火起こしの傍ら、別動隊が鍋の準備を進める。そうは言っても、下ごしらえ済みの食材を鍋に入れ、ペットボトルのミネラルウオーターを投入するだけ。仙台風と山形風の鍋2種類を用意し、かまどにかけた。
秋らしい好天に恵まれたこの日、仙台市内の気温はぐんぐん上昇し、正午時点で24・1度に達した。まきがはぜる音は耳に心地よいが、じりじりした暑さに我慢できず、冷えた缶ビールで乾杯した。「プシュッ」という音もまた、芋煮会に似合う。
酒が進み、座が盛り上がってくると、うっかり鍋を忘れてしまいそうになる。慌ててあくを取り、みそやしょうゆ、料理酒などで味を調える。普段は原稿をチェックしているデスクが味見をして完成。かまど造りからの所要時間は1時間ちょっとだった。
芋煮会シーズンになると、「仙台風」対「山形風」といった対決構図が語られがちだが、それも郷土愛ゆえのお決まりの〝論争〟だろう。里芋がやや硬かったものの、澄んだ空気の中で食べる芋煮は格別。仙台風と山形風のどちらの鍋もすっかり空っぽになった。
ごみは持ち帰りがマナーです
芋煮会を巡っては、ごみの投げ捨てが以前から問題になっている。例えば、1995年9月30日の河北新報夕刊は「芋煮会 ごみは捨てるし 天ぷら油は流す」との見出しで、利用者のマナー違反を取り上げた。近隣に迷惑をかけないよう、ごみの持ち帰りを徹底しよう。火災を起こさないよう、燃え残った炭を片付け、かまど跡に水をまいた。
新型コロナウイルスの影響で、お酒を飲みながら職場の仲間と親交を深める「飲みニケーション」が影を潜めていたが、開放的な野外で感染予防に配慮しながら一緒に鍋を作ることで、同僚の意外な一面を発見することも。この時季ならではの「芋煮ケーション」。初めての人も久しぶりの人も、今年は秋の河原に繰り出してみてはどうだろう。
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