仙台の老舗甘味処「彦いち」 父子のこだわりで築いてきた半世紀の歴史を振り返ってみる
仙台市青葉区一番町の「甘味処(かんみどころ)彦いち」は、あんみつや和風パフェを落ち着いた空間で楽しめる老舗として市民に人気です。宮崎一彦さん(71)が料亭だった建物を引き継いで営業を始めたのは1970年代半ば。今は長男の祐介さん(42)が店長として切り盛りしています。半世紀近い歴史を振り返るとともに、父子の甘味へのこだわりを紹介します。(編集局コンテンツセンター・竹内明日香)

元々は料亭
市中心部で定禅寺通と広瀬通を南北につなぐ一番町四丁目商店街。彦いちの店舗はメインストリートから少しそれた路地裏にたたずむ。平屋造りの店舗の引き戸を開けると、どこか懐かしさを感じる店内が出迎えてくれる。
「建てられたのは約70年前。元々は料亭として使われていました」。祐介さんが説明する。風情あふれる外観やコイが泳ぐ池がある庭、室内の造りに名残が感じられる。高層ビルが立ち並ぶ仙台の中心部にいながら、昭和にタイムスリップしたかのような感覚を覚える。



パフェも人気
あんみつだけで具材の違う11種類がある。あんこは粒、こし、白あんベースの「づんだ」の3種から、蜜は白、黒の2種から選べる。よく注文されるのは「白玉クリームあんみつ」(693円。価格はいずれも税込み)。あんこのしっかりとした甘さと、もっちりとした白玉の食感がたまらない。
華やかなパフェも人気だ。チョコバナナやフルーツといった王道もそろうが、レトロな店内にはあんこが乗った和風が似合う。抹茶パフェ(814円)は寒天もアイスクリームも抹茶味でつくられ、濃厚な風味を楽しめる。


スイーツ男子も来店
あんこは店内で毎日炊き、メニューごとに作り分ける。あんみつ用は甘めに、パフェ用はあっさり柔らかく。祐介さんは「微妙な差ですが、砂糖の種類や練り加減を少しずつ変えています」と説明する。
客層の中心は高齢女性だ。近くの仙台三越での買い物帰りにお茶を楽しむ姿がよく見られるという。「夕方は女子高生、土日は若いカップルや家族連れも来ます」と祐介さん。「最近は男性が一人で来店することも珍しくなくなりました」と変化を感じている。

親子3世代で来店
創業は1976年。店名は一彦さんの名前を逆に読んだもので、当初は甘味も出す喫茶店としての営業だった。
開店から数年は閑古鳥が鳴く日々が続いた。一彦さんも料理長も甘味について全くの素人。なかなか特色を打ち出すことができず、二人で市内の有名店に通い詰めて研究を重ねた。
1980年代のインベーダーブームの時はゲーム機を設置したこともあったが、甘味のこだわりは捨てなかった。メニューも次第に増え、15年ほど前から「甘味処」を名乗るように。一彦さんは今も客の案内で店先に立つ。
ショッピングモールなど商業施設への出店を持ちかけられたこともあったが、父子は断り続けてきた。「この平屋の建物で、坪庭を眺めながら静かに甘味を味わってもらいたい。だからこれからも、この場所だけでずっとやっていければと思っています」(祐介さん)
親子3世代で訪れる常連もいる。「40年以上地域の方に支えられてきました」と祐介さん。「『仙台で甘味処と言えばここ』という店を目指したい」と話す。
[メモ]営業時間は午前11時~午後6時(ラストオーダー午後5時半)。毎週月曜定休。連絡先は022(223)3618。
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