(397)稲無限不意に涙の堰(せき)を切る/渡邊白泉(1913~1969年)
豊かに稲穂が垂れる黄金色の田んぼが、「無限」のように広がっている。それを見ているうちに、思いがけず感情があふれ涙がこぼれ出てきたという劇的な展開。昭和30年に詠まれた句である。戦時中<戦争が廊下の奥に立つてゐた>と詠んだ白泉の眼には、里山の稔(みの)り田の風景は平和の象徴として映ったのだろう。殺伐…
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。