(410)鋸を挽く音遠し秋の暮/吉田富三(1903~1973年)
「秋の暮(くれ)」は秋の夕方、「暮の秋」は秋の終わりの頃。この句は「暮の秋の暮」という感じだ。ちょっと小高い所に行くと、遥(はる)か遠くの山々もよく見える。手前の田園風景を、鉄道がポオッーと走る。鋸(のこぎり)で作業している人もいるなあ。秋の終わりが、ゆっくりと故郷を包んでいく。作者は日本のがん研…
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。