(419)吊し柿風慣れの行はじまりぬ/中原道夫(1951年~)
干し柿。沢山(たくさん)作っている家庭だと、まるで飴(あめ)色の簾(すだれ)のように見える。掲句は干し柿に焦点を当てて、寒い空気に晒(さら)される柿を、風に慣れる修行をしていると見た。たしかに皮を剥ぎ、軸に紐(ひも)を結わえ付けて寒空に晒すわけだが、人間に置き換えてみるとえらく残酷なことをしている…
関連リンク
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。