手を挙げたほうが車は止まる? 信号のない横断歩道で確かめると… 栃木
「信号機のない横断歩道を歩いて渡る時、手を上げれば車の停止率は上がりますか」。下野新聞「あなた発 とちぎ特命取材班」にそんな疑問が寄せられた。日本自動車連盟(JAF)が毎年公表している横断歩道での車の停止率で、2018年に全国最下位に沈んだ栃木県。「止まってくれない栃木県からの脱却」と題したキャンペーンが奏功し、今年の停止率は44.9%で22位だった。改善しているが、まだ半数以上が止まっていない。一時停止は運転者の義務だが、歩行者側の意思表示の効果を調べるため、県内の横断歩道に立ってみた。
9月下旬。まずは調査場所の選定に取りかかった。
JAFは毎年、信号機のない横断歩道で車が歩行者を優先し一時停止した割合を全都道府県で調査している。交通量が1分間に3~8台で、近くに交差点がない横断歩道が条件という。ただ調査地点は非公表だ。
該当しそうな場所はどこか。県警交通部に尋ねると、交通量の面では幹線道路同士を結ぶ道路などが当てはまるとのこと。実際に宇都宮市内で1時間ほど車を走らせて適した場所を探し、同市みどり野町の横断歩道を調査場所に決めた。
JAFは50回横断した際の停止率を公表している。今回の取材では30回とし、1回ごとに道路を横断できるまでに通過した車と止まった車の台数を数えた。意思表示は、(1)挙手なし(2)挙手あり(3)スマホを見てドライバーには目を向けない-の3パターンを試した。
「挙手なし」の場合、30回横断するまでに通過したのは計59台、止まったのは計15台で停止率は20.3%だった。JAFの調査結果の半分程度と少々寂しい結果だった。事業所名を記載した車は止まってくれることが多かった。
次は「挙手あり」。手を上げるのはやや恥ずかしいが、ピンと伸ばすと違いは歴然だ。停止率は55%を超え、「挙手なし」の2倍以上だった。ただ、1台目が通過すると、後続車も通過してしまうことがあった。
スマホを見ていたケースでは、想定通りほとんど止まらず、停止率は6.6%にとどまった。
歩行者と運転者の両輪が鍵
調査では挙手の意思表示に一定の効果があることが分かった。県警交通部の幹部は「停止義務があるドライバーが注意するのはもちろんだが、歩行者側が渡る意思を明確にすることも重要」と呼びかける。歩行者側の意思表示と運転者側の意識の変革-。「止まってくれる栃木県」の実現にはその両輪が鍵となりそうだ。
一方、JAFの調査で7年連続全国1位の長野県にも秘訣(ひけつ)を聞いてみた。長野県警の担当者は「子どもの時に(横断歩道で)車が止まってくれた印象があれば、大人になってハンドルを握っても止まるのが当然という認識を持つ」と説明した。「長年の地道な街頭広報活動、取り締まりの結果では」とし、長期的な視点を持った取り組みの大切さを語った。
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