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男女一緒のプール、割れる賛否 高校の水泳授業に多くの声

 仙台二高(仙台市青葉区)が実施する男女混合の水泳授業に対し「抵抗がある」「時代に合わない」といった同校生徒の疑問を河北新報朝刊で紹介したところ、メールや交流サイト(SNS)などを通じて多くの声が寄せられた。水泳授業は各校の実施方法や有識者の見方も一様でなく、授業の在り方を見直す余地はありそうだ。

男女混合の水泳授業を巡る記事に寄せられた声の一部(背景は仙台二高のプール)

「選択可能に」「不快、理由にならず」 専門家も見方さまざま 

 「プールに入りたくない人は二高を避けて受験しているはず。プールの授業を通じて文武一道の精神を受け継いでほしい」

 二高OGの母親という読者は、無料通信アプリLINEでこんなメッセージを寄せた。「文武一道」は、学業と部活動の両方に等しく力を入れる二高の伝統という。

 二高の授業対応を肯定する意見は他に「宮城県立高は全て男女共学。同じクラスの男女が一緒に体育の授業を受けるのは当然」「一般のプールや海水浴も男女一緒だ」などがあった。

 二高には県立校唯一の競技用50メートルプールがある。新型コロナウイルス禍を経て7月、3年ぶりに水泳授業を再開する。

 男女混合の水泳授業をどう考えるか、他校に尋ねてみた。「各校の判断」と賛否を明言しない学校が多かったが、仙台圏の校長の一人は「二高のプールは広く、男女が同時に入ってもエリアが別なら問題はない」と言い切った。仙台二華高(若林区)は「生徒や保護者にはさまざまな感情があり、より丁寧な説明が求められる」と、生徒全員の理解を得る難しさに言及した。

 自校での授業方法も聞いた。男女別で時間も分けるという柴田高(柴田町)の担当者は「男女が互いに意識することに配慮し、隔週で武道と水泳の授業を男女交互に実施している」と話す。仙台南高(太白区)は「女子は1年生、男子は2年生と別々に実施する」という。

 仙台圏のある校長は約10年前に在籍した県立高で、クラスの半分以上が見学することも多かった水泳授業を、男女混合から男女別に変更した際の経験を説明。「生徒にカメラ付き携帯電話が普及した頃で(盗撮が)心配だった。男女別にしたことで授業回数は減ったが、男女とも見学者が大幅に減った」と振り返る。

 今回の問題に対する専門家の見方はさまざまだ。若島孔文東北大大学院教授(臨床心理学)は「コロナ禍で学校生活を抑制された不満が、元々抵抗感のあるプール授業の実施を機に表れたと思う。水泳の授業を選択制にしたり他の競技に変えるなどの見直しを検討すべき時期ではないか」と指摘する。

 松井敦典鳴門教育大大学院教授(スポーツ科学)は「体の変化への戸惑いと大きく深いプールに入る不安が、生徒らの声に表れたのだろう」と分析した上で「生徒に違和感を抱かせない環境作りは大切だが、『不快』を理由にされると授業は成り立たない」と強調する。(佐藤素子)

宮城県教委、全77校に実態調査

 宮城県立高の水泳授業に関し、県教委が6月、全77校を対象に男女混合の有無などの実態調査をしていたことが分かった。仙台二高の水泳授業を巡る河北新報の同15日付報道を受け、17日から23日まで実施した。

 県教委によると、報道を受けた調査内容は(1)男子と女子が同時にプールを使用している場合の配慮(2)水泳授業への参加を拒んでいる生徒への対応-など。

 このほか水泳授業が必修か選択か、新型コロナウイルス禍の影響があった2020年度から本年度までの水泳授業の実施状況、男子用・女子用の更衣室の有無なども尋ねた。

 県教委保健体育安全課は「(男女混合授業に対し)賛否両論の意見が寄せられたため、各校がどのように授業を実施しているか実態を把握するため調査した」と説明。「実施の仕方の是非を問うのが目的ではない」として、調査結果は公表しないという。

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