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<歴史エッセー 仙台にある野球の聖地(下)>「試合前あいさつ」は武士道の精神を代弁 ―― 石沢友隆(郷土史家)

 野球が始まる前と、終わった後に両チームが球場内であいさつする――いまでは、ごく普通の礼式だが、わが国で初めて行われたのは、仙台市青葉区米ケ袋にあった第二高等学校(旧制二高)の運動場だった。いまの場所で言うと、片平市民センターなどがある片平公園のところである。

 明治44(1911)年11月3日から3日間、二高野球部主催の第1回東北6県中等学校野球大会がここで開かれた。大会の名称は東北6県だが、実際参加したのは宮城、岩手、福島3県から仙台一中、仙台二中、東北中、盛岡中、一関中、相馬中の6校だった。主催者の提案で、両チームの選手と審判団が試合前にホームベースを挟んで一礼をするあいさつが行われた。そのときはいまと違って、あいさつは試合前だけだったという。

 旧制中学校は義務教育の小学校を卒業後、受験して入学する5年制の男子校。進学率は低く、裕福な家庭の子息が多かった。ついでに大会を主催した二高についても簡単に説明しておくと、日本の近代化を進める上でエリートを養成しようと、明治19(1886)年文部省がつくった直轄校である。

 全国を5つに分けて、仙台に二高のほか、東京・一高、京都・三高、金沢・四…

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