車に突っ込まれ休業、南三陸のマドレーヌ店2月1日再開 優しい味もうすぐ復活
昨年秋に運転操作を誤った車が突っ込む事故に遭い、休業していた宮城県南三陸町の南三陸さんさん商店街の菓子店「オーイング菓子工房Ryo」が2月1日に再開する。東日本大震災とコロナ禍に続くまさかの災難を乗り越え、店主の長嶋涼太さん(45)は自慢のマドレーヌを再び多くの人に届けようと意気込む。
東日本大震災で被災
今月18日、店には新しいオーブンで看板商品マドレーヌを焼く長嶋さんの姿があった。妻の玲子さん(49)やスタッフと準備に当たりながら「ようやく再開の日をお知らせできてうれしい」と表情を緩ませた。
元々家族で営み、菓子も作っていた町内のペンションが震災で被災。ボランティアの支援で翌年に菓子作りを再開し、イベントや通販サイトで販売するうちにマドレーヌの人気が高まった。2015年、さんさん商店街に店を構えた。
車が突っ込んだのは昨年9月9日。コロナ禍で落ち込んだ来客が回復してきた時期だった。玲子さんが手にけがを負い、キッチンを含め約50平方メートルの店内はめちゃくちゃに。程なく震災伝承施設「南三陸311メモリアル」が開館して商店街がにぎわう中、無念の休業を強いられた。
蓄えを取り崩し
事故の相手方の保険では休業中のスタッフの給料まで手当てできず、店の蓄えを取り崩した。「どうしてこんなことに…。ずっと不安と悔しさでいっぱいだった」と長嶋さんは言う。
一方で、常連客からは「いつ開けるの」「早く食べたい」と声が届いた。見舞金を贈ってくれたり、情報発信を手伝ってくれたりする人もいて、再開を諦めるわけにはいかなかった。
事故で店内の物は全て使えなくなったため、ほぼゼロからの出発。ショーケースからオーブン、コーヒーマシンまで新調した。ただ、素朴で優しい甘さのマドレーヌへのこだわりは少しも変わらない。焼きたての魅力を伝えたいと、新店舗ではキッチンでマドレーヌを焼く様子がよく見えるよう内窓を付けた。
「待っていてくれる人がいる限り何度でも立ち上がれると改めて感じた。おいしさや楽しさを求めて来てもらえるよう、また頑張りたい」。長嶋さんは決意を新たにする。
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