1億円寄付し財産使い切り? 奨学会、解散しないで 宮城一高卒業生ら署名 「困窮生徒に支援必要」
宮城一高(仙台市青葉区)の生徒への奨学金給付などを担う「宮城一高奨学会」の存続を求め、卒業生らが30日、1000筆超の嘆願署名を奨学会事務局の同校に提出した。奨学会の解散を念頭に財産を使い切るかのような計画を疑問視し、「生徒のために必要だ」と存続を訴える。
奨学会は毎年度、審査を経て10人前後の生徒に各10万円の奨学金を給付している。同校の創立100周年(1997年)の際は、記念事業の一環で整備された多目的ホール「秋桜館」の総工費約5億円のうち4億円を拠出した。奨学会が宮城県に提出した報告書によると、2021年度末時点の会の基本財産は約9600万円だった。
奨学会は15年度、校舎改築時は教育環境整備のため、エアコンなどを同校に寄付する方針を決定。併せて基本財産が300万円を割った場合は定款に従い、解散する方向性も確認した。
署名を集めた「宮一奨学会の今後を考える会」によると、8月に完成予定の新校舎に関し、奨学会は秋桜館のアリーナや柔剣道場へのエアコン整備費用として約6000万円、生徒や教職員の机と椅子の更新・廃棄費用として約3000万円の寄付などを計画しているという。
考える会の愛知学泉短大非常勤講師寺部直子さん(59)=82年卒、愛知県安城市=は「まだ使える机や椅子を全て更新するなどして、1億円近い財産をほとんど使う計画はおかしい。物価高騰などで経済的に困る生徒は今後も出る。奨学金はますます必要になる。奨学会は存続させるべきだ」と訴える。
県教委高校教育課によると、校舎建て替え時に県の予算で生徒と教職員の机・椅子を全て更新したケースは過去にないという。奨学会の計画について同課は「こちらから(拠出を)お願いしたことはない」と説明する。
拠出計画の経緯や詳細について奨学会事務局に取材を申し込んだが、担当者は「2月2日に開く奨学会の理事会後に(取材)対応を考えたい」として、現時点で応じていない。(末永智弘)
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この記事は「読者とともに 特別報道室」に寄せられた情報などを基に取材しました。
[宮城一高奨学会]宮城一女高時代の1952年に設立された財団法人が前身。支援を要する生徒への奨学金給付や教育環境整備への助成などを行う。2008年の校名変更に伴い名称を変更した。
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