(510)心なき吾が木ら樹氷かがやかせ/細谷源二(1906~1970年)
霧の粒が吹き付けられて凍り、木の幹や枝に層をなしていくのが樹氷です。風の吹く方へと白く細かな氷が伸び、やがて全体を覆っていきます。この句を口語にすれば「心のない私の木たちが樹氷を輝かせている」でしょうか。樹木には当然心はありません。しかし、わが木と言うことにより、樹木と自分を同一視するような情感が…
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。