高校の卒業式、保護者の参列制限続く 「制限不要」と通知出たけれど
「イベントの収容規制も緩和されたのに、保護者の出席可能人数に差がある」。新型コロナウイルス下で4シーズン目の卒業式を巡り、宮城県の公立高教諭が「読者とともに 特別報道室」に声を寄せた。高校3年間が丸々コロナ禍に見舞われた今春の卒業生。学校関係者の胸中では感染への不安と、せめて最後に晴れ姿を見せてあげたいという「親心」がせめぎ合う。
「1人制限に疑問」
教諭の勤務校は1月末、保護者の出席は原則1人と決めた。「卒業生数がうちより多いのに2人まで出席可の高校もある。1人制限に疑問を感じた」という。
文部科学省は10日、マスク着用や座席間が触れ合わない程度の距離確保を条件に「来賓や保護者などの参加人数の制限は不要」と都道府県教委に通知した。
東北の公立高の卒業式は大半が3月1日。多くの学校は通知前に保護者の出席を1~2人に限る案内を出した。通知を受けて緩和する動きもあるが、なお慎重な学校も少なくない。
約300人が巣立つ仙台二(仙台市)ではコロナ禍後、保護者が会場の映像を教室で見守る方式が続いたが、3年ぶりに保護者1人限定で会場出席を認める。山田賢一教頭は「直後に高校入試があり、教員も罹患(りかん)できない。卒業式後のことを考えると悩ましい」と明かす。
同規模校でも対応は微妙に異なる。仙台一(同)は会場出席を1人とし、入れない保護者向けに動画を配信する。一方、昨年は1人のみだった仙台三(同)は2人まで認める。
各校まちまち
東北の他県も弘前(弘前市)や秋田(秋田市)など「2人まで」の学校が目立つ。卒業式後に公立高入試や国公立大2次試験の後期日程が控える上、インフルエンザも3シーズンぶりに流行入りしており、人数制限の大幅な緩和は見送る。
会場の座席間隔や収容数など密対策も、各校でまちまちだ。
古川(大崎市)は会場の収容数が3学年分、保護者らの出席は2人まで。収容数が2学年分の石巻西(東松島市)は当初1人と決めたが、通知を受けて2人程度に変更した。卒業生が20人前後の住田(岩手県住田町)や蔵王(宮城県蔵王町)でも2人が上限だ。
私立高も大幅緩和は見られない。東北学院(仙台市)は感染レベルに応じた会場の収容数を決めており、今回は保護者ら2人まで。仙台大明成(同)は「安全安心を担保したい」として1人限定にする。
政府のコロナ対応は急速に平時移行へと傾いているが、学校現場は依然、感染防止を最重視せざるを得ないのが現状だ。自身も高校3年の子がいるという宮城県立高の女性教諭は「卒業式は子どもの成長を実感できる場。コロナ禍でそうした機会が少ないのは残念だ」と保護者の立場で語る。
(相沢みづき、武田俊郎、片山佐和子)
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