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3.11の いま(3)水産加工業 苦境、12年前より深刻化

多くの水産加工会社が立地する石巻市魚町

 発生から12年を迎える東日本大震災は、いまだ多くの課題を住民や行政、事業者に突き付ける。被災地の現在を歩いた。(奥山優紀)

   ◇

<膨らむ借り入れ>

 「なすすべがない状況。全く先が見通せない」。石巻市水産加工業協同組合の臼井泰文代表理事組合長(70)は、業界の厳しい現状を訴える。

 東日本大震災による販路の喪失、東京電力福島第1原発事故の風評被害、人手不足、記録的な不漁、新型コロナウイルス感染拡大、ロシアのウクライナ侵攻に伴う物価高騰-。

 震災の被害から再起を期す水産加工会社の行く手を、あまたの障害が阻む。業績の回復がままならない中、抱えた債務の返済は本格化。新型コロナ対策で借り入れがさらに膨らみ、多くの事業者が苦境に立つ。

<水揚げ落ち込む>

 特に海水温の上昇など海況変化に伴う不漁の影響は深刻だ。今季はブランド魚「金華さば」の水揚げまで落ち込み、関係者を落胆させた。魚価が高騰し、稼働率は低下。さらに資材、燃料価格の上昇が利益を圧迫する。

 新たな魚種や取引先のニーズに対応した商品開発を図ろうにも、資金確保がままならない。石巻冷凍協議会の小池幾世会長(68)は「負のスパイラルから抜け出せない。12年前より今の方がしんどい会社が多い」と語る。

 再建を後押しした制度が、経営のスリム化や新たな事業展開の足かせになるケースもある。多くの被災企業は、国と県が施設・設備の復旧費を4分の3補助するグループ化補助金を活用した。整備した工場や製造ラインを一定期間内に手放すには県の承認が必要で、補助金の一部返還が発生する場合がある。

<設備処分、二の足>

 石巻商工会議所は今年、グループ化補助金の活用企業を対象に調査を実施。水産加工業を含め、少なくとも40社が設備などの処分に二の足を踏んでいることが分かった。「新しい製造ラインを入れたいが身動きが取れない」といった声が上がり、高橋武徳専務理事(70)は「再建当時とは状況が変化している。弾力的な対応が必要だ」と強調する。

 「水産加工業はほとんどが地元資本。燃料や資材、運送など多くの業種も関わっている」。高橋専務理事は地域経済全体の問題だと指摘する。

 業界団体幹部は地元企業の商品が地域内でより多く流通する仕掛けにも活路を見る。「地元の人に買って食べてもらうことが支えになる。われわれは手にとってもらえる商品を作り続けたい」

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