(540)陽炎より手が出て握り飯掴む/高野ムツオ(1947年~)
東日本大震災のときに詠まれた句です。春の陽気に遠くのものが揺らいで見えますが、その中から出た手が配給のおにぎりを力強く掴(つか)みます。涙の視界のような陽炎は、揺らいだ日常や人々の心を例えているでしょう。どうにもならない悲しみや、狭まった思考で動けなくなることがありますが、それでもお腹(なか)は減…
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。