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返杯・献杯、嫌ですか? コロナ禍で否定派増 土佐の「おきゃく」文化どうなる

 高知県民の生活様式をすっかり変えた新型コロナウイルス禍。13日からマスク着用が個人の判断に委ねられ、徐々にコロナ前に戻りつつある。この3年ほど、「お酌やおちょこの回し飲みはやめて」「多人数の会食は避けて」「大皿料理は…」と、ことごとくタブー視された「おきゃく」は、これから一体どうなるのか。

「土佐の『おきゃく』」でお座敷遊びを体験する人たち。べく杯についだ酒をグラスに移して飲む工夫も=8日、高知市追手筋1丁目

 高知市中心街では12日まで「土佐の『おきゃく』」が4年ぶりに開催された。
 ♪「べろべろの~ 神様は~ 正直な神様よ~」
 8日、市内のホテル宴会場で約30人がお座敷遊びに興じていた。「おきゃく」イベントの一つで、これを目当てに新潟から来たという男性(50)は「初対面の人と一緒に盛り上がれた」と満足げ。1年前に本県に赴任した男性会社員(55)も「初体験。高知は酒をコミュニケーションツールにしてる。素晴らしいっ」と赤ら顔で話した。
 11日には、はりまや橋商店街にこたつを並べた「大おきゃく」も。「人に上も下もなく楽しめる」と返杯・献杯をする姿もあり、コロナ前に近い光景が見られた。

返杯・献杯「なくなって」

 高知新聞の「なるほど! こうち取材班」(なるこ取材班)は無料通信アプリ「LINE(ライン)」を通じ、友だち登録している1200人におきゃくや返杯・献杯について質問。161人から回答があった。
 85%に当たる137人が、土佐のおきゃく文化が「今後も残ってほしい」と回答。「料理の取り分けで生まれる交流がある」(40代女性)、「文化までグローバル化すると高知の魅力がなくなる」(50代女性)と好意的だった。
 ただ、「複数人の集まりでは、見えなくてもつばが飛び交っていたんだと気づいた」(40代女性)、「何かと理由をつけて飲むのはもういいかな」(同)という声も。「今後も参加したい」と答えたのは70人。ぐんと少なかった。
 返杯・献杯についてはさらに厳しく、「元々やっていない」が55人、「もうやりたくない」が74人と、否定派が計8割に。「潔癖症には苦痛でしかなかった」(40代女性)、「間接キッスの返杯はしたくない」(70代男性)、「コロナ禍で断りやすくなった。そのままなくなってほしい」(50代女性)との声が上がった。

高知のもてなしそのもの

 県は現在、飲食の人数や時間を制限していないが、返杯・献杯は控えるよう呼び掛けている。
 「私は自分から(杯を)差し出すタイプではないけど…」とは浜田省司知事。今後見直すとすれば、新型コロナが感染症法上の「5類」に引き下げられる5月が一つの契機とする。
 「一律禁止ではなく、個人の判断で良いのでは。5月以降は差し出されればお受けをして楽しくお付き合いしたい。たくさんは飲めないかもしれませんけど」
 「返杯・献杯は絶滅の危機だ」とは、県酒造組合理事長で司牡丹(佐川町)の竹村昭彦社長。コロナ禍で衛生や健康への意識が高まったとみる。
 「皿鉢を取り分け、席を移動して返杯・献杯で酌み交わす。そうやって仲間になるのが土佐の酒文化で、一番の売り。なんとしてもおきゃく文化は残さんといかん」と力を込める。
 本県の料理文化を研究しているRKC調理製菓専門学校の三谷英子常任顧問も「おきゃくは、冠婚葬祭の集まりなど家庭や地域に根付いた大事な文化。高知のおもてなしそのものだし、子どもたちが人間関係の不思議を学ぶ場にもなっていた」と話す。
 単に飲んで騒いでいるようでいて、人、食、酒という高知の魅力が全て詰まった、奥深い土佐のおきゃく。コロナ後に残るかどうか。(高知新聞・大山泰志、蒲原明佳)

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