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わいどローカル編集局>桃生(石巻市)

江戸時代から続く見事な松林
牧場で育てている羊

 石巻地方の特定地域のニュースを集中発信する「わいどローカル編集局」を開設します。4回目は「石巻市桃生地区」です。

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川に囲まれた豊かな地

 石巻市桃生町は約43キロ平方メートルの広さを誇る。北上川に囲まれているため、柳津橋や豊里大橋、神取橋、天王橋といった多くの橋があるのが特徴だ。縄文時代から現代まで、樫崎貝塚、深山貝塚、桃生柵など歴史的な遺物も見られる。近年はチュニジア共和国との国際交流でも知られる。

 「桃生」はアイヌ語で「モムヌプカ(流域の丘)」の意味を持つと言われる。1955年、中津山村と桃生村が合併し、桃生町が誕生、2005年に石巻市と合併した。世帯数は2435、人口は6561(3月2日現在)。

 元石巻市文化財保護委員で、町史編さんに携わった千葉昌子さん(80)=同市桃生町中津山=は「当時は中津山村の方が人口が多かったが、桃生の名を採用した。当時の方々の先見の明に感謝したい」と話す。古代牡鹿郡から分かれて建郡された「桃生郡」は平成の大合併で消滅。「桃生」の名は残った。

 住民の憩いの場となっているのが北上川河川敷にある植立山公園。ソフトボール場、テニスコート、グラウンドゴルフ場のスポーツ施設に加え、江戸時代から続く松林が連なる。

 千葉さんは「一般的に海岸線沿いに多い松林が川の近くにあるのは珍しい」と話す。自生だったことに加え、江戸・享保の時代(1716~1736年)の領主黒沢氏が補植したことが大きかったと推測する。

 公園内には、1998年9月に当時の町文化協会、町教委が建立した地元出身で江戸時代後期の俳人遠藤曰人(あつじん)(1758~1836年)の「遠匂するや 野薮のかくれ梅」の句碑があり、俳句愛好者らの隠れた人気スポットになっている。

 米作りで栄えてきた桃生だが、近年はスリムネギやガーベラなどが名高い。「ものうウール」の名称で製品化しているグループも出ている。千葉さんは「新しい動きが出てきて、うれしい限り」と笑顔を見せる。

ものうウール好評 羊を育て手仕事で製品に

温かみのある羊毛のベスト

 「羊毛の素晴らしさを少しでも感じてもらえればうれしい」。石巻市桃生町の主婦らでつくる「ものうウール」の今野美江子代表(73)=石巻市桃生町太田=は語る。

 夫の公(いさお)さん(77)が敷地内の牧場3ヘクタールで育てる羊の毛から手作業で染色などを経て毛糸を紡ぎ、セーターやマフラー、帽子、手袋などを製品化。羊毛ならではの温かみのある肌触りが人気を集めている。

 天然素材の羊毛は、保温性や伸縮性などに優れているほか、タンパク質でできているため土壌の微生物に分解され、大地に戻る。環境に優しく、まさに持続可能な開発目標(SDGs)にふさわしい。

 「手作業のため、大量には作れないけれど『丁寧に』をモットーに心がけています」と今野代表。糸の紡ぎ方によって触感に違いが出るという。

 最近、うれしい出来事が相次いだ。ここ1年ほどで13人だった会員が20人に増加。今月中旬には双子の雄の子羊も誕生した。小中学生も訪れ、体験学習に取り組むようになった。「教えるとすぐに覚えてできるようになる。私たちも児童、生徒から元気をもらっています」と相乗効果に目を細める。

 会員が一緒に作業に取り組むのは毎月第2土曜日の1回だけ。それでも「空気を吸うだけでリラックスできるという人もいるほど」と和気あいあいとした雰囲気の中、作業に当たる。

 第2土曜日は見学もできる。連絡先は今野代表090(8612)2882=午前10時~午後4時。

寺崎はねこ踊り保存会、地域に元気を

大太鼓の練習に励む佐々木会長

 躍動感あふれる動きで、全国にその名をとどろかす県指定無形民俗文化財「寺崎はねこ踊り」。保存会の会長を務めるのが佐々木一さん(75)=石巻市桃生町寺崎=だ。

 1970年の保存会発足時から携わり、半世紀以上が経過した。「前年の69年に東京都内であった全国青年大会郷土芸能の部で2位になったのがきっかけ。当時の寺崎青年会のメンバーらで盛り上がり、保存会が誕生した」と振り返る。

 大きな転機は74年に始めた中津山二小児童への指導だ。96年には桃生、中津山一の両小、桃生中で指導を開始。桃生地区の全ての小中学校で寺崎はねこ踊りが伝承されるようになった。「児童、生徒は、はねこ踊りを通して古里を愛する心が芽生えたように感じる」と佐々木さん。子どもたちは卒業後も、はねこ踊りに魅了され続ける。保存会には20代から70代までが名を連ね、親子3代の会員もいる。伝統は脈々と受け継がれている。

 「ここ数年は新型コロナウイルスの影響で、年間20から30のステージがなくなった」と残念がる。それでも2021年の東京五輪聖火リレーや第40回全国豊かな海づくり大会の式典行事プロローグなどの大舞台で披露し、大喝采を浴びた。

 「長くはねこ踊りに携わってこられたのは前会長の西條金夫さん(故人)や保存会顧問の高橋新治ら先輩、同僚、後輩の支えがあったからこそ」と、感謝も忘れない。

 5月28日は市複合文化施設(マルホンまきあーとテラス)である「カンタータ大いなる故郷石巻」への出演も控える。会員は1月から週1回のペースで練習に励み、日増しに士気が上がる。「はねこ踊りを通して、少しでも皆さんに元気、勇気が与えられればと思う」。意欲は衰えない。

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 今回は桃生販売所と連携し、桜井泉記者が担当しました。次回は「東松島市赤井」です。

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