(561)忘れ物の如く母ゐてあたたかし/今瀬剛一(1936年~)
「忘れ物のようだ」とは肯定的な表現ではありません。忘れられて嬉(うれ)しい人はいませんものね。だからこそ、いったいどんなことを詠んだのかと想像を広げることができます。忘れ去られた物が無言で置かれるように、強い主張をせず静かな母、ふと大切な存在なのだと思い返す人。「忘れる」という言葉からは認知症も頭…
関連リンク
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。