(563)鳥雲に入りてその雲流れをり/八木澤高原(1907~1994年)
冬の間日本にいた白鳥や雁(がん)などの渡り鳥たち。春になると北方に帰ってゆく。コの字形の隊列を組み、高く、高く……。そしてやがて雲間に見えなくなる。このような景色を俳人は「鳥雲に入る」と言って季題としている。掲句では、鳥の姿はすでに見えない。景色としては、帰北の群れをすっぽり包んで流れる雲があるだ…
関連リンク
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- ・(559)欄干に忘れし腕(かいな)花吹雪/山岸由佳(1977年~)
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。