特集>石巻かほく創刊43周年 広く深く 声をつなぎ、共に生きる
三陸河北新報社が発行する「石巻かほく」は21日、創刊43周年を迎えた。石巻地方の地域メディアとして、行政、文化、教育、スポーツなど地域の情報を発信し続けてきた。2011年3月の東日本大震災以降は震災からの復興、そこに生じる課題、人々の思いなどを伝えてきた。
新聞に自身の記事が載ったり、写真が掲載されたりする。「載ってたね」「見たよ」-。声はつながり、共感や新たな意欲を生みだす。交流サイト(SNS)の普及など情報発信の形は変わっていくが、手に取れる「紙面」を通じて人と地域をつなぐ。
震災から12年。石巻かほくは、これからも地域に住む人たちと歩む。
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「石巻かほく」は、石巻地方3市町の日々のニュースを分かりやすく届けるとともに、教育、経済、スポーツ、文化、防災の特集面を設けています。東日本大震災からの復興過程をはじめ、その時々の地域課題を掘り下げた企画記事、写真を前面に地域の豊かさを紹介する「色彩(いろいろ)模様」「食探見(しょくたんけん)」も特色の一つです。「発掘!古代いしのまき」「漂流民を追う あるく みる きく」の二つの読み物も好評をいただいています。
読者からの投稿作品を紹介する文芸コーナーにも多くの作品が寄せられ、文化面ではさまざまな団体、アーティストの作品も紹介しています。さらに「毎週楽しみにしている」と多くの応募があるクロスワードクイズでは回答に加えて紙面への感想、期待などが寄せられ、紙面制作への励み、意欲につながっています。
昨年10月に紙面をリニューアル。冒頭で紹介した「色彩模様」「食探見」に加え、それまでモノクロだった店舗情報「いらっしゃいませ」をカラー化。土産物など、地域の推しの一品を紹介する「イッピン」も加わりました。
読者投稿欄「こえ」もスタート。毎日の読者コラム「つつじ野」などと合わせ、読者とつくる紙面づくりを進めています。
「紙面はまずここから目を通す」という声が多い訃報広告。企業の動きや新たな店舗情報を伝える広告覧も、多くの方々に広く伝える地域紙の大きな役割の一つです。
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活躍を記事で紹介
<掲載を力に稽古励む>
「紙面に自分の名前や写真が載るとうれしかった。競技を頑張るきっかけになったので、子どもたちにも同じような経験をしてもらい、自信につなげてほしい」。石巻市釜小の卒業生で、大学時代に剣道で世界剣道選手権の日本代表に選出された小松加奈さん(24)が、今春から母校の講師として勤務している。所属した道場でも後進の育成に励み、子どもたちに目標を持つことの大切さを教える。
2人の兄の影響で5歳から竹刀を手に取り、市内の一心堂剣道スポーツ少年団で技を磨いた。大会の結果が載った新聞などが道場に掲示されていたといい、「回りから『頑張ってるね』と声をかけてもらえる。モチベーションの一つだった」と当時を振り返る。
石巻市青葉中では全国中学大会個人戦に出場。高校は東奥義塾高(青森)に進み、3年夏のインターハイで個人戦優勝を果たした。
地元を離れても活躍する姿が報道され、家族らの喜ぶ声を聞くのが励み。明大(東京)進学後は教職課程を履修しながら稽古に打ち込み、2018年に世界選手権出場、その後は大学剣道部で主将も務めている。
「石巻は私の原点。小中学生の頃のように、また地元に貢献したい」。願いが通じ、大学卒業後、東奥義塾高の事務職を経て、釜小の講師になった。今は3、4年生の算数の授業で担任教師の補助などをこなす。
地元愛が強く「児童は東日本大震災を知らない世代。震災当時、守られる立場だった自分が今度は守る立場として防災の大切さを話していければいい」と意欲を見せる。
剣道では現役の選手として、来年の世界大会(イタリア・ミラノ)出場を目標に、週に数回、道場に顔を出す。「褒めて長所を伸ばし、新聞に載せてあげたい」。経験を伝えていく。
「つつじ野」で執筆
<考え整理する機会に>
石巻市青葉中校長の平塚真一郎さん(56)は、同校教頭だった2018年の12月から19年1月にかけて、本紙読者コラム「つつじ野」を計9回執筆した。「自分の人生を振り返り、考えを整理する機会になった。東日本大震災に関する講話や、校長としての式典での話などのベースになっている」と話す。
平塚さんは石巻市福地出身。16~18年に青葉中教頭、名取市みどり台中、東松島市矢本一中校長を経て、23年4月から現職。震災で大川小6年だった長女小晴さん=当時(12)=を亡くしている。
18年から全国の教員や小中学生、高校生を対象に教員と大川小遺族の両方の立場から見た震災や防災についての講話を続けている。21年には小学校高学年向けの共著「きみは『3・11』をしっていますか?」を刊行した。
つつじ野のテーマは自身の趣味であるニュースポーツのキンボールや青葉中生徒のボランティアグループ「青中お助け隊」の紹介、石巻地方の中高生対象の人間力育成講座「耕人塾」など多岐にわたった。19年1月6日には「成人の君たちへ」のタイトルで掲載。長女と同い年の新成人たちにエールを送った。
「教育には人を輝かせ、過去を意味づける役割があり、それを導いていくのが教員。自分もつつじ野を通じて過去と向き合い、人生の意味について改めて考えた」と振り返る。各地での講演に加え、校長となって式典などで生徒に直接話す機会も増えた。
「今年の新入生は、11年に乳幼児だった子どもたち。たくさんの人の協力で命がつながったことを入学式でも呼びかけた」と語る。「子どもたちが『頑張ってみようかな』と思えるような、背中を押せる言葉を今後も届けていけたら」。穏やかに笑み、前を見た。
私たちも読んでます
■中国料理「揚子江」社長・今野美穂さん(49)「市民参加型の企画、期待」
東日本大震災の直後、ご近所の愛犬が迷子になり、その後1カ月ぶりに飼い主の元に戻ったという記事が載りました。石巻かほくの迷い犬の広告を見て、保護した人が連絡したという内容でした。地元紙らしいニュースで、新聞には人と人をつなぐ力があると感じました。自分や店が新聞に載り「見たよ」と声をかけてもらうことも多く、コミュニケーションのきっかけになっています。
読者は身近なニュースや情報を求めています。「子ども記者」や各家庭の防災の備えを募るなど、市民参加型の企画を期待します。
■主婦・佐藤りつ子さん(74)「悩み相談、役立つのでは」
創刊当時から購読し、情報源として楽しく読んでいます。新しいお店やスポットの情報が載っていると「行ってみよう」と出かける際の参考になり、お悔やみ欄にも目を通しています。
孫が写った写真が載っていると小さくても見つけられます。載っていた新聞を自宅に飾っていたら、家族との会話が弾みました。
寄せられた困り事や悩み事にお寺の住職さんらが答えるコーナーがあると良いなと感じます。小さな記事に救われることがあるように、回答が参考になったり救われたりする人もいるのではないでしょうか。
■女川水産業体験施設「あがいんステーション」スタッフ・崎村暢子さん(37)「紙面に知人、うれしく」
読者が執筆するコラム「つつじ野」や、石巻地方のイベントの記事で知り合いが載っているとうれしくなり、地域に根差した新聞の魅力を日々感じています。
スマートフォンを使い、ネット記事で女川町などの話題を見ることもありますが、じっくり読むのは自分の気になるニュースが中心。紙媒体はジャンルを問わず情報が目に入ります。両方とも大事な媒体ですね。
子どもは4歳で新聞を読むのはまだ先の話ですが「いろんなことが分かるようになる。知識の幅も広がるよ」と大切さを伝えていきたいです。
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