(568)鳴いてゐる亀の美声を疑はず/岡田一実(1976年~)
季語は「亀鳴く」。実際の亀には声帯器官はなく、想像上の情緒的な季語だ。しかし掲句は今まさに「鳴いてゐる」ので、作者は何かが鳴く声を確かに聴いている。亀が鳴くということ、それが美声であることを、二重に疑わずに信じている。常識ではありえないと言われることでも、自分の生の感覚を信じてそれを疑わない。作者…
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。