(582)手花火や背後の海は闇につづく/前田霧人(1946年~)
浜辺で手花火をしている風景でしょう。小さくしゃがみ込み、パチパチとはじける火を見ていると、自分と自分の足元が明るく照らし出されます。しかしそれ以外は夏の夜の闇。背中を向ける海は真っ黒で果てが無いようですし、どこからか海ではなくなり、闇そのものに続いているように感じます。下五の「闇につづく」は六音の…
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。