(583)残業や硝子(がらす)をつつく金魚の口/斉藤志歩(1992年~)
職場に置かれた金魚鉢か。水中をゆったり泳ぐ金魚は、忙(せわ)しなく働く人々を癒やしてくれる存在なのだろう。定時を過ぎ窓の外は暗くなり、社員たちが帰宅していく中、残業で一人居残りの作者。ふと金魚鉢の方を見やる。この職場で動いているのは、硝子をつつく金魚と作者のみ。ガラス窓で覆われた職場が一つの金魚鉢…
関連リンク
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