津波新想定踏まえ避難計画改定へ 石巻市が意見交換会 住民「具体策乏しい」
石巻市は19日、県が昨年5月に公表した最大級の津波浸水想定を踏まえて改定を進めている津波避難計画などについて、旧市内6カ所での住民意見交換会を終えた。新たな避難施設の確保や車両を使った避難の位置付けなどに具体的な進展が乏しく、住民からは不安の声が相次いだ。
市は浸水域が震災時の1.2倍に広がり、避難困難地域の居住者が市内人口の約6割に拡大する見込みと説明。津波からの避難は交通渋滞による逃げ遅れを防ぐため原則徒歩を維持。要配慮者らの車両避難の在り方について地域でルールを検討していくことが必要との考えを示した。
17日にあった渡波地区の住民意見交換会で参加者らは、震災後に整備した避難道「渡波稲井線」の渋滞緩和に向けて内陸側に駐車スペースを設けるなど、車両避難を可能にする対策を要望した。しかし、市は「命を守るため、原則徒歩避難を推奨している。歩いて高い場所に逃げることを考えてほしい」と理解を求めた。
新想定で渡波地区は海岸線から山際までほぼ全域が3メートル以上浸水する上、指定の津波避難ビルやタワーの数が不足。渡波稲井線は、大きな地震のたびに避難車両で渋滞を繰り返す。新たな避難施設が示されなかったことに不満が広がった。
同市松原町の阿部和夫さん(75)は「避難場所や渋滞緩和の具体的な対策が示されると思っていたが、期待した内容はなかった」とため息をついた。
内陸部の蛇田地区で18日にあった意見交換会でも、避難施設の収容能力について不安の声が上がった。市は浸水の恐れがあるとして、蛇田中や蛇田公民館などを津波避難場所から2階以上の利用を想定した津波避難ビルに変更する方針。蛇田中央公園などは避難場所指定を解除する。
震災時、蛇田中に向かったという出席者は「体育館や1階を使っても、避難者がいっぱいで入れなかった。避難場所が足りないのではないか」と懸念した。
市危機対策課の馬場貴司課長は「地域住民から情報をいただき、できるだけ多く確保する。原則徒歩避難の考え方も、命を守るためと粘り強く啓発していきたい」と語る。
市は地域防災計画と津波ハザードマップの改定案も公表。総合支所管内でも6月上旬までに住民意見交換会を開く。津波ハザードマップは秋頃に配布し、地域防災計画と津波避難計画は11月の総合防災訓練までに策定する方針。
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