(600)尺取虫老いは往ったり来たりする/武藤鉦ニ(1935~2021年)
シャクトリムシは蛾(が)の幼虫で、指で長さを測るような動きで進むことからこの名が付いたそうです。初夏から秋まで現れますが、姿がよく見られて森の緑に際立つ夏の季語です。シャクトリムシの這(は)う様子と取り合わされているのは、作者の老いの実感です。活力に満ちた一日を過ごしていても、あるときにふと衰えを…
関連リンク
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。