震災後の教育現場を記録、出版 初代北上小校長・橋本さん「子どもの輝きに喜び」
東日本大震災後に石巻市の旧相川小や初代北上小の校長を務めた橋本恵司さん(66)=女川町=が「東日本大震災と子どものミライ」と題した本(春風社)を出版した。震災直後の相川小から、吉浜小、橋浦小と統合して誕生した北上小までの4年間の子どもたちや学校の様子を記録として残しておこうと著した。これまでの教育実践の記録なども盛り込んだ。
相川小は3階校舎の屋上まで津波が襲い全壊した。児童、職員は校舎裏山に避難したが、早く下校した1人は行方不明のまま。吉浜小も3階屋上のすぐ下まで津波が到達した。3校は震災後、被災を免れた橋浦小で教育活動を再開した。
「3校の各学年が一つの教室で一緒に学習する特異な状況だ。一緒に行う行事を精選し、運動会と学芸会は残すことにした」
6月の運動会。「子どもたちの元気な姿に大人が元気をもらい、復興に向けての力が湧いてきた」。閉会式のPTA会長のあいさつに、無理を押しても実施して良かったと率直な思いを記した。
相川小児童の思いも紹介している。「相川は自然がいっぱい。学校も好きです。思い出の教室や運動着。校歌を歌うと相川を思い出し、涙が出ます」
2012年春、1年後の3校の閉校と統合が決定。最後の1年は、それぞれの学校の教育活動を進めることに決まった。相川小として最後の記念に、詩人の谷川俊太郎さんとの授業が実現した。
13年4月、北上小が開校し、「縦割り班活動」に意識して取り組む。震災で失われた3校それぞれの地域の良さを見つめ直し、郷土愛を育む多彩な活動も展開した。防災教育の充実にも力を入れ、自分の命は自分で守る力を育んでいった。
橋本さんは「震災後の苦しい中でも前に進もうとする子どもたちの姿に未来を感じた。教員も力をもらい、学校再建に努めた」と語る。
教員時代の実践記録は現代の教員不足解消の一助になってほしいという思いで掲載した。橋本さんは「子どもの一瞬の輝きは教員の喜び。未来のある子どもを育てる素晴らしさを感じ取ってほしい」と話す。
橋本さんは女川町出身。宮城教育大卒。県石巻教育事務所指導主事、石巻市稲井小校長などを務めた。
全392ページ。700冊を刊行し、2500円(税別)。石巻市と女川町の書店で扱っている。
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