<記憶の素描(22)芥川賞作家・石沢麻依>書物神殿のどこかに
古書店には、古いパラフィン紙めいた肌触りの空気が漂っている。書棚の入り組む空間で誰かが本を開く度に、すぐに破けそうなもろい音がこぼれ、薄暗い店内を小さくざわつかせるのだった。ハイデルベルクの大通りに面した古書店の中、橙(だいだい)色の照明は壁を埋め尽くす本を鈍く、どこか眠たげに照らしていた。その一…
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