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<記憶の素描(15)芥川賞作家・石沢麻依>火の色をしたもの

 3年ぶり、という言葉が影の中からこぼれてくる。一度のみならず幾度も、火の粉が弾けるように、その響きは通り過ぎる私の耳をかすめた。黒くざわめく人影の間から、小さな白い雲が笑い声と共に飛び出すが、すぐに柔らかな雪の欠片(かけら)に紛れ込んでしまう。黒い緞帳(どんちょう)めいた夜の中、待ち合わせ人を探し…

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記憶の素描

 仙台市出身の芥川賞作家石沢麻依さんのエッセーです。ドイツでの生活で目にした風景や習慣の妙、芸術と歴史に触発された思い、そして慣れ親しんだ本や仙台の記憶を、色彩豊かにつづります。

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