<記憶の素描(15)芥川賞作家・石沢麻依>火の色をしたもの
3年ぶり、という言葉が影の中からこぼれてくる。一度のみならず幾度も、火の粉が弾けるように、その響きは通り過ぎる私の耳をかすめた。黒くざわめく人影の間から、小さな白い雲が笑い声と共に飛び出すが、すぐに柔らかな雪の欠片(かけら)に紛れ込んでしまう。黒い緞帳(どんちょう)めいた夜の中、待ち合わせ人を探し…
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