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<記憶の素描(16)芥川賞作家・石沢麻依>走り回る寿司

 なだらかに広がる雪と氷の上に、幾つもの魚の切り身がひっそり並んでいる。鮭(さけ)や鱈(たら)、海老(えび)などいつもの顔ぶれの中に、珍しく鰈(かれい)の姿があった。イェーナの街の中心に近いスーパーの魚売り場は、目で味覚を楽しむ場所だ。高い値段に素通りするのが普通だが、記憶の襞(ひだ)に染み込んだ魚…

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記憶の素描

 仙台市出身の芥川賞作家石沢麻依さんのエッセーです。ドイツでの生活で目にした風景や習慣の妙、芸術と歴史に触発された思い、そして慣れ親しんだ本や仙台の記憶を、色彩豊かにつづります。

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