(659)炎天、子のいまはの水をさがしにゆく/松尾あつゆき(1904~1983年)
「炎天、」と打たれた読点が、無慈悲なほどの空の青さを際立たせる。じりじりと焦げ付くような空と、実際に焦げ付いた瓦礫(がれき)。死に水に汲(く)む水もないほど、街は何もなくなってしまった。藤原定家の『明月記』に「紅旗征戎(こうきせいじゅう)吾が事に非ず」つまり戦乱は自分の和歌の対象としないという名高…
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