(708)柚子の香やはなればなれに座るべき/宇多喜代子(1935年~)
場面の具体的な説明はありません。何かの寄り合いか、家に集まったのか。席を自由に選ぶような状況で、ある人とは一定の距離を置かなければいけないと思っているようです。「べき」という意思を強制するような言い回しですから、隣に座りたい本当の気持ちを押しとどめているような気もします。場面を語るのは柚子(ゆず)…
関連リンク
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。