(710)虫の夜の底に残れる甕の水/高橋健文(1951年~)
<あれまつむしが ないている ちんちろちんちろ ちんちろりん>。知人の小学校の先生曰(いわ)く、音楽の時間はなぜか大盛り上がりなのだそうな。唱歌「虫のこえ」は楽しげに歌い上げるが、俳句の世界の虫は、どこか物悲しさが漂う。天水甕(がめ)に虫の声が響き、水面にわずかな波紋が立つ。夜の底にひっそりと佇(…
関連リンク
- ・(709)考へず深く睡(ねむ)らむ鉦叩(かねたたき)/黒田杏子(1938~2023年)
- ・(708)柚子の香やはなればなれに座るべき/宇多喜代子(1935年~)
- ・(707)豊の秋筋を通して疲れたる/山田桃晃(1929年~)
- ・(706)天の川青い鯨が泣いたとさ/柿本多映(1928年~)
- ・(705)身の内の自律はきかず花野ゆく/和田悟朗(1923~2015年)
「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。