(740)青年へ愛なき冬木日曇る/佐藤鬼房(1919~2002年)
葉を落としきった冬の立木です。花も緑も紅葉の鮮やかさもとうに失っています。冬木と響き合うように、青年も富を持たず、愛に飢えているのでしょう。彼に冬木が与えられたとて、そこに優しさや癒やしがあるわけではありません。両者の触れ合いは木の幹のようにゴツゴツとしていますが、それでも彼の青春の中に一つの出会…
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。