(759)枯菊を括(くく)れば胸に日の匂ひ/森有也(1941年~)
庭の手入れのため枯菊を刈りとって一括りにする。花や枝葉は色褪(あ)せ、からからに乾いてはいるが、まとめて胸に抱くと太陽のような良い匂いがする。秋の盛りの間、菊花はたっぷりと日を浴びたのだろう。哀れな姿の中に美しさも宿る。「胸に」からは、ふんわりと大きく香ってくる様子とともに、心にもせまってくる香り…
関連リンク
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。