(766)窓口に蜜柑の匂ひ残りけり/野住朋可(1992年~)
窓口に蜜柑(みかん)の匂い。いったいどこの窓口なのだろう。インテリア的に置いてあったのが、いつの間にかなくなっていたのかな。省略を利かせて、窓口と蜜柑の香り以外の情報が一切ない。それゆえに、社会の歯車として人が働く「窓口」に、爽やかな蜜柑の香りが一服の清涼剤のように際立つ。その場所に今はないが、そ…
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。