(762)十二月八日の霜の屋根幾万/加藤楸邨(1905~1993年)
1941(昭和16)年の12月8日、朝のラジオに太平洋戦争開戦の臨時ニュースが放送された。それを聞いた作者の衝撃と緊張が伝わる。屋根には霜が降りている。そこから同じように日本中の幾万もの霜の屋根を、その下で暮らす人々を思う。この句は、戦争について何も言ってはいない。しかし、開戦と戦果の興奮や喝采と…
関連リンク
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- ・(759)枯菊を括(くく)れば胸に日の匂ひ/森有也(1941年~)
- ・(758)椅子に身をなじませてゆく暖房車/西山睦(1946年~)
- ・(757)冬枯の中の目鼻として立てり/永瀬十悟(1953年~)
「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。