(820)春潮の遠鳴る能登を母郷とす/能村登四郎(1911~2001年)
作者の名字と名前の頭文字は「能登」。自身は東京出身だが、父祖は金沢にルーツがある。作者の比較的初期の句に<汗ばみて加賀強情の血ありけり>もある。掲句は最晩年の句。生活の地は離れていても、生涯能登の地を心の底に抱いていたのだろう。今年の元日に発生した能登半島地震では、海からの津波も大きな被害をもたら…
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- ・(815)流氷が愛に定義を与へけり/野名紅里(1998年~)
「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。