東日本大震災 復興と詩と13年目の決心(3) ありがとう 心の声、紡ぎ続け誇りに
惨禍の体験は多感な中学生の胸に重く、暗く沈んだ。心の整理を詩に託しながら、行きつ戻りつ。消化し切れない私の気持ちを置いてけぼりにし、復興を急ぐ街。東日本大震災から13年。ようやく決心が付いた。やっと語れる。次世代につなごう。街と生きよう。石巻市のぞみ野の会社員佐藤ゆりかさん(27)が口を開く。(相沢春花)
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「ご両親の笑っている姿が見たい」
毎週会社に通ってくれるボランティアが言った。本当? なぜそこまで私たちを思ってくれるのか。石巻市湊中3年だった佐藤ゆりかさんは分からなかった。
東日本大震災の津波で、両親が経営する水産加工会社は大きな被害を受けた。被災した機械の運搬や泥かき。各地のボランティアが手伝ってくれた。
関わりのない街に通う気持ちが理解できなかった。偽善。自己満足。そんな動機で来ていると思った。
2011年7月、避難所から仮設住宅に移った。学校帰りは津波の跡が残る街を通る。暗くなると「お化け屋敷よりも怖い」。自転車のライトが一つ。佐藤さんの目に復興の光は全く見えなかった。定期的にしか来ないボランティアは、きれいになっていく石巻しか知らないだろう。
仮設住宅では、自分と向き合う時間が増えた。「なぜ生きているんだろう」。ネガティブな考えが取りつく。思いを詩に吐き出した。
悩み抜き、落ちる所まで落ちた。隣にいてくれたのは、会社の片付けを手伝うボランティアたちだった。たわいもない話に付き合い、親身になってくれた。
震災から2年、会社が完全に復旧。両親に笑顔が戻った。「僕たちがやってきたことは正しかったんだ」。ボランティアは言った。
やっと気付いた。「ずっと支えられていたんだ」。感謝を伝えたい。初めて人のために詩を書いた。
「ゆりかちゃんの詩に勇気づけられたよ」。寄り添ってくれたボランティアに感謝された。
詩に感情を吐き出し、ぶつけてきた。感謝の気持ちを乗せた詩が、人の心を動かす。つづり続けた詩は、佐藤さんの誇りになった。
昨年9月、会社の復旧をボランティアで手伝ってくれた書道家に詩を書き起こしてもらい、大崎市で作品展を開いた。書きためた詩は、多くの人に受け止めてもらえたと思う。
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