(863)暮淋し花の後(うしろ)の鬼瓦/本間友五(生没年不詳)
この句のポイントは「鬼瓦」だろう。お花見を一日楽しんだその後の夕暮れ。花に光が失(う)せてゆく。でも、燃える夕日の朱を受けて、桜の花は最も桜らしい色合いにも見えてくる。見上げると、桜の木の奥にあるお宅の屋根のおっかない顔をした鬼瓦。鬼瓦はこんな風流の時季にも強面(こわもて)を崩さない。鬼瓦さん、あ…
関連リンク
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。