(858)春愁や草の柔毛(にこげ)のいちしるく/芝不器男(1903~1930年)
季節の変わり目のアンニュイな気持ちを指す「春愁(はるうれい)」という季語が使われています。取り合わされるのは草の表面に生える柔らかな毛が著しいという描写です。鬱々(うつうつ)とした気持ちの中、じっと路傍の草を見つめていたのでしょうか。普段では気付かない細やかなところまで観察が深まっていきます。柔ら…
関連リンク
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。