(873)海とどまりわれら流れてゆきしかな/金子兜太(1919~2018年)
無季の句です。眼前に海が広がり、波がゆっくりと打ち寄せてきます。形の定まらない海に「海とどまり」の表現は多少違和感があります。しかし、水が流れ続けて大海を巡るとしても、海そのものはいつでもそこにあり、全体が移動することはまれです。一方で、私という個は確かにここにありますが、さまざまな場所へと移ろい…
関連リンク
- ・(872)朝寝して間寛平血沼海(ちぬのうみ)/岩田奎(1999年~)
- ・(871)われもまたこぼれゆくもの四月の木/川口真理(1961年~)
- ・(870)初蝶の既に命の重さかな/大関靖博(1948~)
- ・(869)かなしい日さくらとともに去って行く/川村旺己(2012年~)
- ・(868)チューリップ母の視線はまぶしくて/行方克巳(1944年~)
関連タグ
最新写真特集
「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。