(868)チューリップ母の視線はまぶしくて/行方克巳(1944年~)
チューリップを見ると童心に返った気がするのは、あの有名な童謡のせいだろうか。この句は私に、小学校の入学式を想起させる。子どもの頃、親からの視線は家の中ではほとんど意識しないのだが、それが家の外、特に人前では妙に照れくさいものだった。晴れ着を身に着け緊張する自分に、同じく正装の母が誇らしげにほほ笑む…
関連リンク
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。