(869)かなしい日さくらとともに去って行く/川村旺己(2012年~)
思いがけない謎が生まれている句だ。芭蕉に<田一枚うゑて立ち去る柳かな>の句があるが、芭蕉一行が立ち去るのか、田植えを終えた早乙女たちが立ち去るのか、それとも柳の木自身が立ち去ったのか、複数の読み方ができることで有名。掲句、花を散らせた桜の木が、哀(かな)しい記憶を預かって立ち去って行くような感じが…
関連リンク
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。