(928)夏草やかつて人間たりし土/長谷川櫂(1954年~)
「おくのほそ道」で平泉を訪れた松尾芭蕉は、中国の詩人・杜甫の「国破れて山河あり、城春にして草青みたり」を引きつつ、<夏草や兵どもが夢の跡>と詠んだ。掲出句の「夏草や」は芭蕉の句が念頭にあるだろうが、場所は変わって沖縄を詠んでいる。沖縄戦の犠牲者たちの遺骨が今も残る土中と、その上に生い茂る夏草。「か…
関連リンク
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。