(924)蛇去つて戸口をおそふ野の夕日/吉田鴻司(1918~2005年)
家の戸の前に蛇がやって来たのでしょう。追い払って目線を上げると、斜陽の光が強く照り付けてきました。日が沈む野原は金色に輝き、草の穂先は赤く、遠くの木々は暗く染まっています。あまりに美しい景色ですが、自然がもたらすのは豊かさだけではありません。追い返した蛇が自然へと帰る代わりに、夕焼けが野を越えて暮…
関連リンク
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- ・(920)あやめ艸(ぐさ)足に結(むすば)ん草鞋(わらじ)の緒/松尾芭蕉(1644~1694年)
- ・(919)死思えるは生きておりしよ著莪の花/大井恒行(1948年~)
「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。