(929)紫蘇の香の厨(くりや)ニクロム線の朱/一力 五郎(1902~1947年)
ニクロム線コンロが、薄暗い梅雨の台所にぼうっと光っている。ほのかに漂う紫蘇(しそ)の葉の香りが、その景色を鮮烈に印象づける。暮らしの中で気になるものをずばっと取り出し、その瞬間の感覚、空気の質感のようなものも表現してしまうのが俳句の魅力。そのような仕方で物を見る視線が生活に浸透している。俳句を通し…
関連リンク
- ・(928)夏草やかつて人間たりし土/長谷川櫂(1954年~)
- ・(927)友達でふさがっている祭かな/田島健一(1973年~)
- ・(926)消えてなおサイダーの泡空めざす/乾佐伎(1990年~)
- ・(925)井戸をつく音に目覚めし帰省かな/金子兜太(1919~2018年)
- ・(924)蛇去つて戸口をおそふ野の夕日/吉田鴻司(1918~2005年)
「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。