(929)紫蘇の香の厨(くりや)ニクロム線の朱/一力 五郎(1902~1947年)
ニクロム線コンロが、薄暗い梅雨の台所にぼうっと光っている。ほのかに漂う紫蘇(しそ)の葉の香りが、その景色を鮮烈に印象づける。暮らしの中で気になるものをずばっと取り出し、その瞬間の感覚、空気の質感のようなものも表現してしまうのが俳句の魅力。そのような仕方で物を見る視線が生活に浸透している。俳句を通し…
関連リンク
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