(944)大の字に寝て涼しさよ淋しさよ/小林一茶(1763~1828年)
一茶50歳。十年超に及ぶ義母・義弟との泥沼の遺産相続騒動を経てやっと郷里の屋敷を相続したころの句である。ようやく訪れた安寧にほっと一息、誰に遠慮することなく座敷に大の字に。何と心地よいのだろう。しかし涼やかな風にのって胸をかすめる満たされなさ、淋(さび)しさ。一茶がこのとき独身だったということもあ…
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。