空自70年目の松島基地、共存共栄の現在地(2) 基地交付金 給食費半額を補助
「いただきます」。16日、東松島市の赤井小(児童148人)の1年生26人が声を合わせてあいさつをすると、一斉に給食を頬張った。この日の献立は唐揚げや地元野菜のみそ汁など。「おいしい」。教室に笑顔が広がった。
市は今年4月、市立小中学校の給食費半額補助に踏み切った。年間9150万円の費用がかかり、航空自衛隊松島基地の立地に伴う防衛関連の交付金で全額を賄っている。片岡明恵校長は「家計が助かると話す保護者は多い」と説明する一方、その財源については「知らない人が多いのではないか」
■医療費も無償化
交付金の額は、騒音といった住民の生活環境への影響、自治体の財政状況などを考慮して決まる。
市の2024年度一般会計当初予算は227億8300万円。市財政課によると、このうち約8億2500万円を基地関連の交付金や補助金に頼り、給食費補助や18歳までの医療費無償化などに充てている。鷹来の森運動公園の改修や市道改良にも活用する方針。
これらの事業について、市財政課の難波和幸課長は「市民生活と密接なものが多い。(交付金などは)予算編成の上で大きな存在」と説明する。中でも最重点施策に位置付けるのが、子育て支援を中心とした人口減少対策だ。
旧矢本、鳴瀬両町が合併した05年に4万3773人だった市の人口は、19年に4万人を割り込み、現在は3万8061人(24年7月1日)。「空自隊員やそのOBの定住が人口減少カーブを緩やかにしている」(市幹部)との見方もあるが、対応は待ったなしだ。
渥美巌市長は2日の定例記者会見で「これからは生き残りを懸けた自治体間競争になる」と強調。子育て世代の定住に向け、給食費の補助率アップや無償化に意欲を示し、その財源となる交付金の増額を国に求める方針を示した。
■依存への懸念も
市民の多くがこうした市に取り組みを歓迎する一方、一部には「基地マネー」に依存する危うさを懸念する声もある。
市議会の長谷川博副議長は、少子化対策の重要性は理解するとした上で「事業ありきで交付金が膨らむことで、東松島は金を出せば何でも受け入れると政府が考え、基地機能の強化を迫るような事態にならないか」と先行きを不安視した。
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航空自衛隊は7月、発足70周年を迎えた。松島基地で1954年にパイロットの養成が始まってから70年目の節目でもある。地元東松島市は「ブルーインパルスのまち」として知名度を高め、立地に伴う交付金の恩恵を受ける一方、基地の変容を危惧する声も上がる。基地との「共存共栄」を掲げるまちのいまを報告する。=4回続き=
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