空自70年目の松島基地、共存共栄の現在地(1) 「基地は財産」 ブルーの聖地、恩恵享受
航空自衛隊は7月、発足70周年を迎えた。松島基地で1954年にパイロットの養成が始まってから70年目の節目でもある。地元東松島市は「ブルーインパルスのまち」として知名度を高め、立地に伴う交付金の恩恵を受ける一方、基地の変容を危惧する声も上がる。基地との「共存共栄」を掲げるまちのいまを報告する。(都築理)=4回続き、次回は23日=
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6月30日、東松島市野蒜の観光商業施設「奥松島クラブハウス」の一角に、同市にある航空自衛隊松島基地(※)の曲技飛行チーム「ブルーインパルス」の壁画アートがお目見えした。
同施設を航空ファンが集う「聖地」にしようと、運営会社の新入社員高橋ちはるさん(22)らが企画。コンテナ倉庫にアーティストが下絵を描き、高校生ボランティアが色を塗った。
高橋さんは地元の野蒜地区出身。自宅の上空を飛行するブルーインパルスは日常の一部だった。「騒音を勉強の邪魔に感じていた」と振り返る。
■人と人つなげる
県内の大学に進学後、地元にできた同施設でアルバイトを始めてから、そんな考えが変わったという。ブルーインパルス目当てに、多くの熱心なファンが全国から東松島を訪ねて来ることを知ったからだ。
初対面のファン同士がブルーインパルスの話題で意気投合する。白いスモークを引いて上空を舞う姿に歓声を上げる。「ブルーが人と人をつなぐ。すごい存在なんだ」。そんな思いもあり、アルバイト先への就職を決めた。
今年4月に経済界有志らでつくる民間組織「人口戦略会議」が公表した報告書で、同市は石巻地方2市1町で唯一「消滅可能性自治体」にならなかった。渥美巌市長は「(ブルーインパルスが所属する)松島基地が要因の一つ」と言い切る。
市は基地関連の交付金で学校給食費の半額補助、18歳までの医療費無償化といった少子化対策をきめ細かく展開する。航空ファンを引き寄せる基地の経済効果は「年間で数億円規模」(商工関係者)とされ、高橋さんのように、ブルーインパルスを通して地元に愛着を深める若者もいる。
「市の全国的な知名度も少子化対策に充てる交付金も、基地あってこそ。市の財産と言っていい」。渥美市長はそう強調する。
一方、基地では4月以降、空自の大型無人偵察機グローバルホークや米軍戦闘機F16の飛来が相次いだ。市は住民が不安を募らせているとして国に交付金の増額を求める方針だ。
■現状維持を望む
渥美市長は「市にとっては基地が現在の役割を維持することが望ましい」と、基地機能の強化には否定的な姿勢を示している。ただ「国際情勢は常に変化している。国防は国の専管事項であり、最終的には政府が(基地の役割を)決める」とも語った。
(※)航空自衛隊松島基地:1942年に完成した旧海軍飛行場が前身。戦後、米軍による接収を経て54年、保安隊臨時松島派遣隊が新設されパイロットの養成を開始、55年に空自松島基地となった。現在はブルーインパルスの本拠地として知られ、F2戦闘機パイロットの養成や捜索・救難活動も担う。2011年の東日本大震災では高さ約2メートルの津波に遭い、F2など28機が使用不能になった。
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